人文社会科学部 時任翔平先生

人文社会科学部の時任翔平准教授がYUCaNメンバーに加わりました。

https://www-hs.yamagata-u.ac.jp/faculty/teacher/db/teacher_111/

今や貿易は自動車や洋服などの最終財だけではなく、部品などの中間財の割合が大きくなり、グローバルサプライチェーンの拡張・深化が起こっています。これにより、生産地が多様化し、日本企業の製品でも、アフリカなどで原料が生産され、東南アジアで加工され中国から出荷されるような、各地域を渡り歩いて手元に届くものもあります。このように、生産地と消費地が分かれるだけでなく、生産地が分散・複雑化したため、これからの公平な環境保全・地球温暖化対策においては一国・一産業が各々で対策をしていくのではなく、グローバルサプライチェーン全体を俯瞰し把握したうえで政策を決定することが重要となります。下の図は2019年の各国の生産に伴うCO2排出量と、その財が最終的にどこの国で消費されているかを示しています。例えば中国(CHN)とアメリカ(USA)を結ぶ黄色いリボンはアメリカの最終消費が誘発する中国での生産に伴うCO2排出量の大きさを反映しており、全体に占める割合が大きいことがわかります。直接取引をしていなくても、サプライチェーンを通してCO2排出を誘発しているので、様々な国が密接に複雑につながっていることがわかります。

グローバルサプライチェーンを把握するには多地域産業連関表を用いた産業連関分析が有用であり、複雑なグローバルサプライチェーンを通した消費と汚染の関係がNature誌などのトップジャーナルにも多く掲載されています。しかし、産業連関分析の多くが「消費」と「生産・汚染」の関係を明らかにするものであり、そのネットワーク全体の構造の分析は発展途上です。どこがたくさん汚染をしているのか、それはどこの国の消費が誘発しているのか、これらはエネルギーミックスなどの生産側の政策やエコラベルなどの消費側の政策において非常に重要な情報ですが、様々な製品に投入される部品やサービスなどサプライチェーンネットワークの「ハブ」もまたサプライチェーンの再編やリスク回避などに重要です。私はこの「ハブ」となる産業・国やネットワークの特性などについて、主に産業連関表を用いて分析しています。

2019年のグローバルサプライチェーンにおける排出移転

山形大学カーボンニュートラル研究センター

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